- 高齢化社会を迎えた現代社会では、地域医療を支えるクリニックの役割はますます重要になってきています。クリニックに求められる機能も、治療のみならずケアをより重視したものにシフトしていくでしょう。ケアを受けられる患者さんは定期的に訪れるため、クリニックの地域コミュニティーとしての性格も強まることが予想されます。そうすると待合室などの非診察ゾーンの充実も大切になります。心地よい待合室は患者さん一人一人に対するホスピタリティーを提供する場となるでしょう。同様に、診察室も清潔性や暖かさ、癒しを備えさせた空間とすることが必要になります。
- 私たちはドクターといろいろなお話をします。その中でドクターの診療に対するご意向を伺い、それらを形にして医院建築に反映させていきます。そして、ドクターそれぞれの診療に対するお考えや特徴に社会的な見地や周辺の環境との関係性を加味し、ドクターと共にこれからの地域社会に求められるクリニックに作り上げることを目指しています。
- 入口は敷地条件が許す限り大きな庭や車寄せを設けるか、建物に入り組んだエントランスを設けて、患者さんが雨の日でも安心して出入りできるよう工夫します。
- 風除室はクリニックの入口にあたり、文字どおり外気が直接内部に入り込まないための干渉帯です。また、二足制の場合、下足箱を設置するスペースにもなります。このため床の仕様も外部用から内部用に切り替わる場所となります。
- 待合室は患者さんが長く居られるスペースです。このスペースは診察室等とは違う機能が求められると考えております。プランが許す限り、ゆったりとリラックスできる空間づくりのため、家庭のリビングやホテルのロビー等をイメージしてご提案します。また、診察ゾーンは各科目においても標準仕様的なものとなりますので、待合室はクリニックの個性を示せる場ともいえるのではないでしょうか。
- 患者用WCは多くの場合、待合室からスムーズにアクセスできる場所に設置し、パスBOXを介して尿検査コーナーに隣接させます。最近の傾向では1室に大便器と小便器を並列させるケースが多いです。これはクリニックは限られたスペースでの運用となりますので、なかなか男女別のWCを設けることができないことが前提になっております。また、大便器の清潔性を保つためにも、小便器を別に設けることは有効です。そのほかにも福祉の条例による車椅子対応のスペースが、大小の便器を並列させることで効率よく取れるというメリットがあります。
- 受付はクリニックの司令塔です。当然、求められる機能は幅広くなります。まず、患者さんを迎え入れる場所に近くて、待合室全体が見渡せるように配置します。そのうえで診察室、薬局との連携を重視しなければなりません。電子カルテを採用するのか、LAN配線はどうするのかなど最も詳細な打ち合わせが必要なところとなります。また、患者さんとの接点となる受付カウンターは医院の顔ともいえる重要なファクターと考えます。
- 薬局は基本的に院外処方が難しい場合に設置が必要となります。院内薬局が必要かどうかによってプラン全体が変わることもあるので、できるだけ早期にその可否が決まっている状態が望ましいのです。
- 必要であれば水廻りにかかわる工事が必要なケースもあるので、内部レイアウトは着工前には決定していることが理想的です。配置的には受付と連続して設けます。
- 診察室は受付、待合室、処置室、X線室との動線計画が重要です。 ドクターの診察形態や方針によってプランが決まってきます。したがって、ドクターご自身の診察を見据えた打ち合わせができるかどうかが重要になります。ここでは現在、お勤めの病院との共通点、相違点を整理して図面化していくことも良いプランへの近道かもしれません。
- 処置室は必要なベッドの数によって、ある程度広さが決まってきます。点滴、採血をどのようにするのかによってもベッドの数が変わりますので、打ち合わせの段階で正確に想定することが必要です。
- また、シンクの作業性や待合室へ戻る動線も考慮した計画が求められます。待合室の次に患者さんが最も長時間居る場所になりますので、庭(外部)と接したり音楽を聴けるようにする等リラックスできるよう工夫します。
- 検査室はドクターの診察内容によって必要であれば設けております。また、将来的な医療展開を見越して設置を決断されるドクターも少なくありません。検査室に限らず、どこにどの器械を設置するのかを、より具体的に想定することが重要です。
- X線室の設置に関しては多くの業種がかかわります。ドクター、X線メーカー、施工者(大工、防護業者、電気業者、建具業者)など多くの人がかかわるので綿密な打ち合わせが必要です。施工後、最も動かし難いもののひとつとなります。